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とおいまち
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© 2017 abeatsushi
橙色・魔法使い見習いのシロ

「HONESTY」

その女の子の視線に気付いたのは
5月の連休明けだった。

HONESTY

僕はとりわけかっこいいわけではない。
頭も普通、スポーツもそこそこ。

だからしばらくは、視線が自分以外に向けられているものだと
思うこともあった。
でも確かに僕を見ていた。
嬉しくもあったが、もし違っていたらとても恥ずかしいことになる…
心はどっちつかずだった。

そんな状態のまま6月になり、僕なりにその子のことを調べてみた。

ちなみに僕は吉川健一。中学1年の12歳。
クラスは学年に3つしかなく、僕は1組。
調べたところ、彼女は3組だとわかった。
そしてその子の名前もわかった。

彼女の名前は中川あゆみ。
彼女もとりわけ目立つ可愛さをもった容姿ではなかった。
違う小学校からの中学進級のため、それ以上のことはわからないが、
この1ヶ月間で、僕に気があることはわかった。

そこまでされると僕も彼女のことが気になるもので、
今は何をしているのか、部活は何部なのか、
さらに情報が欲しくなった。

実は僕の友達の中にも、彼女が僕を見ていることを知っている人がいて、
その友人もそのことに確信を持ったのか、僕にこう言ってきた。

HONESTY

「あの3組の女、お前のこと、いっつも見てるな」
そのことに気付いている上、もっと色んなことを知っているのに、
「誰だよ、お前知ってる人?」
とか言って、場を濁した。

そしてその友人とは時々、彼女のことで盛り上がっていた。
あんまり可愛くないとか、ストーカーっぽいとか、
とにかく彼女に聞かれたくないようなことを次々と言った。

彼女のことに興味を持てば持つほど、気持ちが揺れ動き
今では頭の中に”両想い”という言葉がちらつきはじめていた。

それなのに僕は、彼女に聞かれたくないことを
その友人と笑って話していた。

心の中では必死に否定していた。
そんなことは思ってないとずっと否定していた。
でも、そんなのは何の意味もなかった。

心の中でなんと思っていようと、口から出た言葉がなにより真実だった。
そして、

僕の言葉は彼女に届いてしまった。
友人が面白半分で他の人にも話し、その友人もまた別の人に話し、
中学一年という年齢にとって、これほど話題性のあるものはなかった。

僕には「大変だな」という同情のような言葉があった。
そして彼女には、
「ストーカー」というレッテルが張られていた。

当然それ以来、彼女が僕を見ることはなくなった。
友人は「良かったな」と、言葉をかけてくれた。

『言いふらしておいて…!』と心の中で思ったが、
悪いのは僕だとわかっていた。

HONESTY

ストーカーなどどいうレッテルを貼られ、
彼女が今、どんな思いで毎日を送っているのか…
どんな気持ちでクラスにいるのか…

気が気でなかった…。

僕は最低なヤツだった。

7月の夏休み前、偶然僕は彼女を見た。
人通りの少ない廊下で目があってしまった。

HONESTY

彼女は決まり悪そうにして、うつむきながら僕の横を通りすぎていった。
僕はどんな顔をしていたのか、
彼女の目にどう映っていたのか、
まったくわからなかった。
頭が真っ白になっていた。

その時、後ろで声がした。
「ごめんなさい、本当にごめんなさい…」
泣き声まじりで必死にあやまる彼女だった。

僕は振り向けなかった。
彼女が背中越しに遠くへ行くのがわかっていても振り向けなかった。

HONESTY

僕も泣いていた。

僕が友人に言った言葉を
僕の気持ちとして受け取った彼女にとって、
僕に声をかけるのはとても勇気の必要なことであったと思う。

自分がしてしまったこと、
なんであんなことを言ってしまったんだろうと思うことが
悔しくて、僕は泣いていた。

あの時に戻れるなら、友人との会話で
ストーカーなどということは絶対言わない…絶対に言わない…!
そんな考えが頭の中をめぐっていた。

勇気がほしい。
彼女は勇気をふりしぼって僕に声をかけてくれた。
僕は…

僕は彼女の行ったほうへかけるように向かった。

HONESTY

彼女は人通りの少ない廊下の、さらに人目のつきにくいところで
かがんで泣いていた。
小さく小さく涙をすすっていた。

僕の気配に気付き、
何事もなかったかのように立ち上がって、その場を立ち去ろうとした時、
近くに来たのが僕だと気付き、
ビックリしていた。
でも、今度は僕の横を通りすぎることはなかった。

HONESTY

僕も泣いていたから。

僕は彼女のほうを向き、震える声で精一杯言った。
「ごめんなさい」

それから
僕の本当の気持ち、君が見ていたことに気付いていたこと、
こっちも君を見ていたんだってこと、
すべて話した。

彼女はだまって聞いていた。
僕は自分がどれほど最低なやつか
どれほど嫌なやつかわかっていた。

僕の言葉で彼女を苦しい目にあわせてしまったことに
何度も何度も謝った。

でも、何度謝っても許されない気がした。
彼女が受けた苦しみを考えると、許されてはいけないと思った。
彼女の涙は止まっていた。

そして彼女の口が開いた。

「私は自分がしていることが、ストーカーっぽいなんて思ってなかった。
でも、まわりからそう言われて、吉川君もそう思ってるって知って、
私はヒドイことを、してはいけないことをいていたんだと初めて気付いたの。

私の行動で吉川君が嫌な思いをいていたんだと思って、
クラスの皆からストーカーって呼ばれても、
自分には当然、受けなければいけない罰だと思っていた。

苦しかった…でも吉川君が感じたことに比べたら…ってずっと思ってた。
でもさっき吉川君の顔を見た瞬間、その頑張りの緊張がとけちゃって…

そして、大事なことを忘れていたことに気付いたの。

謝ってなかった…って…」

そこまで彼女が話してところで、僕は首を横に大きく振って彼女の話を遮った。

「悪いのは僕の方…本当に…本当にごめんね。
ストーカーなんてよばれて、苦しかったでしょ、大変だったでしょ…。
本当に…ごめんね…」
僕はまた、何度も何度も謝った。

彼女は「うん、うん」とうなずいているように思えた…。
彼女の目にもまた涙が潤んできて、
僕たちは二人で少し泣いた。
そして、

二人で少し笑った。

HONESTY

僕は、正直な気持ちと少しの勇気に…
そしてなにより彼女に感謝した。

心の底から、ありがとう、と。

終わり


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